フィルムカメラのような体験を重視したコンセプトに惹かれつつも、「ボディがプラスチック製でチープ」「AF性能が微妙」などネガティブな評価も多く、購入を迷っていたX Half。そんな折、発売直前に抽選販売の案内が届きました。

悩みつつも「まあ当たらないだろう」と軽い気持ちで応募してみたものの、一次抽選では見事に落選。諦めかけていたところ、発売当日にキャンセルが出たのか、二次抽選で当選の連絡が。これには一気にテンションが上がり、勢いでポチってしまいました。

FUJIFILM X Half
FUJIFILM X Half(X-HF1)チャコールシルバー

心配していた外観は問題なし

手元に届いてまず驚いたのが、意外にもチープさを感じなかったこと。指で軽く叩けば確かにプラスチックらしい音はしますが、手に持った感触や見た目の印象はむしろ金属的で、小ぶりなサイズも相まって「ちゃんとモノとしての満足感」があります。

FUJIFILM X Half
SQUAREHOODのレリーズボタンとフィンガーストラップを装着

「軽すぎておもちゃっぽい」との声も耳にしますが、実際にはバッテリーを入れれば適度な重量感があり、握ったときの安心感も。貼り革(おそらくゴム素材)のおかげでホールド感も良好で、ストリートスナップにちょうどいいサイズと軽さです。

「チープ、チープ」と先に聞いていた分、逆に期待値が下がっていたのかもしれませんが、外観・質感については個人的にまったく問題なし。むしろ可愛らしさと携帯性のバランスが絶妙で、日常使いにぴったりです。

FUJIFILM X Half
ダイヤルとリング類はプラスチック感が強め

使用感

ファインダーは完全な素通しで、フレーム表示もなければパララックス補正もありません。つまり、構図やピント位置は完全に感覚頼り。AF撮影でも、どこにピントが合っているかは確認できず、狙い通りに写せたかどうかは撮ってからのお楽しみ、というスタイルです。

そのため、使いやすさを重視するならMF(マニュアルフォーカス)で、絞りをF5.6〜F8程度にしてパンフォーカス気味にするのがベスト。ピント距離を目測で3m前後に設定しておけば、大抵のスナップには十分です。

これはまさに、昔のハーフサイズカメラの撮り方と同じ。再現度が高いというより、「こういう撮り方を楽しむカメラ」だと割り切るのが正解です。

FUJIFILM X Half
素通しのファインダー

近距離でしっかりピントを合わせたい場合は、背面液晶を使ったAF撮影になりますが、液晶サイズはかなり小さめ。老眼気味の私にはやや厳しいですが、ターゲット層である若いユーザーなら問題ないでしょう。

FUJIFILM X Half
縦表示の背面液晶は小さめ

PEN EEと並べてもサイズ感はほぼ同じ。外装がプラ製な分、重量も軽く、携帯性は抜群です。ただし、軽すぎて不安を感じる場面もあるので、ストラップの装着は強くおすすめします。フィンガーストラップだけでも十分な安心感が得られます。

FUJIFILM X HalfとOLYMPUS PEN EE
FUJIFILM X HalfとOLYMPUS PEN EE
FUJIFILM X HalfとOLYMPUS PEN EE
本物のハーフカメラと絶妙に近いサイズ感

フィルムカメラモード

本機最大の特徴が「フィルムカメラモード」。これは、かつてのフィルムカメラのように使うためのモードで、最初に撮影枚数(36枚、54枚、72枚)とフィルムシミュレーション(例:クラシックネガ、ノスタルジックネガなど)を設定すると、撮り終えるまで撮影画像の確認ができなくなります。

表示されるのは露出情報と残り枚数のみ。まさに、”写るか写らないか” は専用スマホアプリX half Appを使って現像してからのお楽しみという、フィルムらしい体験が味わえます。

FUJIFILM X Half
撮影画像の確認はできず、構図の確認もファインダーでしかできない「フィルムカメラモード」

AFとMFの切り替えは可能ですが、液晶が使えない=ピント位置は見えないので、実際にはMFで目測撮影をすることになります。構図も感覚頼り、ピントも感覚頼り。まさに「思い通りに写らないことを楽しむ」スタイルです。

結果を見るまでわからない。だけどそれがいい。そう思える人にとって、このフィルムカメラモードはとても魅力的な体験になるはずです。

専用スマホアプリX half App
専用スマホアプリX half Appでの現像処理も割と時間がかかる

総評

プラスチック外装、AF性能の弱さ、RAW非対応といった要素で厳しい評価をされがちなX Halfですが、それはたぶん価格の影響が大きいと思います。実売11万円という価格は、どうしても期待値が高くなりますし、カメラに「性能」を求める層には厳しく映るでしょう。

ただ、コンセプトから考えれば、RAWが使えないことも「仕様」として納得できます。フィルム時代、多くの人は撮った写真を自分で現像せず、仕上がったプリントが全てでした。X Halfは、そうした“撮って終わり”の潔さをデジタルで再現しようとしたカメラです。

つまり、写真を「作品」として仕上げたい人には向かないけれど、「撮ることそのものを楽しみたい」人にとっては、極めてユニークで魅力的な1台です。

このカメラの価値をどう捉えるか。それによって評価は180度変わるでしょう。
精密な撮影を求める“ガチ勢”からすれば全く評価されないでしょうし、雰囲気や感覚を重視する“楽しみたい勢”からは称賛されるはず。

私はというと――
このカメラのコンセプトにはとても共感しますし、実際に使ってみて楽しかった。でも、正直言うと「長く使いたい」とまでは思いませんでした。そういう意味で、これは“体験して満足”なカメラだったのかもしれません。

ただ、久しぶりにフィルムシミュレーションを使ったことで、FUJIFILMのカメラが少し恋しくなりました。
今はマイクロフォーサーズをメインに使っていますが、またXマウントに戻ろうか――そんな思いがふと湧いてきたのも事実です。

きっと、このカメラで初めてフィルムシミュレーションに触れた人も、
「もっと本格的な機種で撮ってみたい」と感じるのではないでしょうか。
それこそが、FUJIFILMの真の狙いなのかもしれません。

こんな人におすすめ

X Halfは、万人におすすめできるカメラではありません。ですが、以下のような方には強くおすすめできます。

  • フィルムカメラ世代で、あの感覚をもう一度味わいたい人
  • 「完璧な写真」よりも、「撮る過程」や「偶然性」を楽しみたい人
  • 写ルンですやトイカメラのような“ユルさ”に魅力を感じる人
  • 機材に頼らず、自分の感覚で写真を撮りたい人
  • 撮った後すぐに写真を見なくても平気な人

逆に、以下のような方にはあまり向いていないかもしれません。

  • ピントや露出をしっかり追い込みたい人
  • RAWでレタッチ前提の運用をしたい人
  • 1枚1枚の写りに高画質・高解像度を求める人
  • ファインダーで精密に構図を決めたい人

このカメラは、スペックを超えた“体験”に価値を置くタイプの道具です。使いこなすというより「一緒に遊ぶ」感覚で向き合うと、きっとその魅力が伝わってくると思います。

作例